2013年5月9日木曜日

【書評】海賊と呼ばれた男

かつて、日本には海賊と呼ばれた男がいた。。。
と始めたくなるタイトルですが、実際には
「青い空がどこまでも続いていた。」で始まります。
そして敗戦直後の日本、社員1000名を抱えたまま何も売るモノがないそうした状況で、社員の前でこう言い放つ。
「愚痴は止めよ。(中略)日本は必ずや再び立ち上がる。世界は再び驚倒するであろう」

冒頭からいきなり主人公、国岡鐡造の世界にひきこまれる。

そして物語は、日本の工業化から戦争、オイルショックと激動の時代をかけめぐる。

上下巻あわせ700ページにもなる小説だが最後まで退屈する部分がなかった。

ベストセラー「永遠の0(ゼロ)」の作者である百田尚樹の著書であり、第10回本屋大賞を受賞したこの「海賊と呼ばれた男」は、ある現実の人物の人生を描いた物語である。

それは先日のブログ『考える」人の未来』でも少し触れた出光佐三である。

というわけで、前回のブログを書いている際にもこの本を読んでいたのですが、

国岡(出光)という男は気違いです。
それと同時に、真の日本人です。

彼がいなければ、日本の高度経済成長はありえなかった。
(どころではなく、日本は未だに農業国かもしれない。)
彼の先見の明、気概、頑固さが日本終わった。と思う時を何度も救います。

そして、同時に考えさせられるのは、日本という国は過去を通して現在まで、何も変わっていないということ。
上には迎合し、下には、きつくあたる。ことなかれ主義、護送船団を代表に建前は立派で中身は既得権益の保護。

こうしたことに辟易しながらも、あきらめず、絶望の淵に追いやられながらも、あきらめず、日本のために行動する彼の姿はまさに海賊である。

エピソードがリアルに基づくだけあってリアリティがあり、それでいて、そんなまさか!というドラマチックさもあり、これは本屋大賞にも選ばれるよ!という納得の一冊。




海賊とよばれた男(上・下)
作者:百田尚樹
出版社:講談社
発売日:2012/07/12

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